大腸カメラ検査の「技術力」「診断力」「精度」  その2

その2は「診断力」と「精度」です。

■診断力

検査をおこなう以上、病変があればそれを発見し治療することになります。ここで求められるのが診断力です。

・大腸のひだの裏までをくまなく観察できること

・微細な病変を見逃さず発見できること

・病変に対し適切な治療方法を選択できること

診断力の高さは、前回述べた「技術力」のうち、盲腸到達率の高さ、盲腸到達時間の短さとも関連性があり、医師の実力が試されます。

■精度

・見つけたポリープが将来、がんになる可能性の高い「腺腫」か、腺腫でないかの見極め力

・この腺腫を見逃さないこと、またより多く見つけられるかどうか

しかし、診断力、精度と聞くと何か主観的な印象を持ってしまいます。客観的な指標が求められます。

■診断力と精度を客観的に評価する指標

その指標となるのが「腺腫発見率」です。

日本消化器内視鏡学会のガイドラインでは、大腸カメラ検査の質の指標として「腺腫発見率」が取り上げられています。腺腫発見率は、Adenoma Detection Rateのことで「ADR」といいます。

大腸がんのほとんどは、腺腫というポリープから生じます。この大腸がんになる前の腺腫をより多く発見し、治療することが大腸がんのリスクを下げるのです。

「ADRが1%上がれば、その後の大腸がん発症リスクは3%、大腸がん死亡率は5%低下する」ことが論文で明らかになっています (N Engl Med. 2014.370 (14) 1298-1306)。

このようにADRは、大腸カメラ検査の質の評価において非常に重要な指標であり、内視鏡医のレベルを確認する際の判断材料にもなり得ます。

アメリカ消化器内視鏡学会 (ASGE) のガイドラインには、内視鏡医に必要なADRは25%以上であることが求められています。

参考までに当クリニックのADRを記します。

内視鏡検査実績:                           12,148件

大腸カメラ件数:                           5,460件

腺腫発見率 (ADR)                            57.2%

期間:2020年8月17日 (開業) ~2024年11月21日

究極の大腸がん予防とは、大腸がんに育つ前の腺腫を発見し治療することです。大腸がんは日本でもっとも罹患数が多いがんで、50歳を過ぎるとリスクが高まります。

「自宅から近いから」「先生がやさしいから」という理由で医療機関を選ぶ方の気持ちは察しますが、自分の命、健康のために、レベルの高い医療機関を選択することがとても重要だと考えます。

これまで「技術力」「診断力」「精度」について述べてきましたが、大腸カメラ検査をどこで受けようか迷ったときは「腺腫発見率 (ADR)」も検討材料の一つに加えてみてはいかがでしょうか。

大腸カメラ検査の「技術力」「診断力」「精度」  その1

大腸カメラ検査を受けようとするとき、どのような基準で医療機関を選んだらよいのでしょうか?

「家から近いから」「先生がやさしいから」などの理由を聞きます。また過去の経験で受けるかどうか迷っている方もいらっしゃいます。

医療機関の選択基準に「技術力」「診断力」「精度」も加えてみてはいかがでしょうか。2回に分けてお話します。今回は「技術力」についてです。

■ 技術力

・「無送気軸保持短縮法」による挿入ができること

大腸カメラ検査の痛さ・つらさの原因は、難所と呼ばれるS状結腸をスコープで無理に伸ばしたり、必要以上にガスや空気を入れて大腸に負担をかけるからです。

「無送気軸保持短縮法」とは、大腸のひだを手繰り寄せ、観察時以外はほぼガスを入れない技術です。この高度な技術により、痛さやつらさを感じさせず、また大腸のもっとも奥にある盲腸まで到達できます

・盲腸到達率が高いこと

当クリニックでの盲腸奥までの到達率は、99.94%です。大腸検査をおこなう以上、当たり前のことですが大腸全体を検査しますので、盲腸到達率も、内視鏡医に求められる技術力です。

・短時間で到達できること (最早1分、平均3分程度)

到達率だけではありません。到達時間も大事なポイントです。検査の間も大腸は動いていますので、条件が悪くなる前に観察する必要があります。当クリニックの最早盲腸到達時間1分、平均3分程度とかなり早い到達時間です。腸が動き出す前しっかり観察でき、また観察に時間をかけることもできるので、これも重要な技術です。

・大腸のヒダ裏までくまなく観察できる (見落としがない) こと

いよいよ、腸内を観察しながらスコープを抜いていきます。この抜きの観察がおろそかになると病変の見落としにつながるため、ヒダの裏や曲がり角には特に注意を払いながら丁寧に観察します。

観察については、次回の「診断力」と「精度」でお話します。

大腸カメラ検査の「技術力」と一言でいっても、実際は「無送気軸保持短縮法」による難所S状結腸の負担軽減と最小時間での通過、盲腸到達率の高さ、また到達時間の早さが問われます。

大腸カメラ検査を検討している方は、ぜひ参考にしていただければと思います。次回は、診察力と精度です。

さらなる高みへ (Toward even Greater Heights)

険しい山の頂は、十勝毎日新聞 (2024年8月21日付) に掲載した広告です。

早いもので開院から4周年を迎えました。「さらなる高みへ」は、スタッフ全員の診療にたいする強い意思を表現しています。わたしたちは、「情熱」と「粘り強さ」を持ち続け、ひたむきに 「内視鏡で救える命を守る」をやり抜きます。

ご参考までに2020年8月開院し2024年7月までの内視鏡の検査数です。

内視鏡検査実績        1 1,128 件

胃カメラ検査         6,067 件

大腸カメラ検査           5,061  件

大腸腺腫・がん発見      2,834 件

大腸腺腫とは将来がん化する可能性の高い腫瘍であり、がん発見と合わせて2,834件でした。これは大腸カメラ検査を受けた方の56%と半数を超えています。

これからも受診者と正面から向き合い、疾患の本質にアプローチし、質の高い診療に取り組んでいきます。

胃がんの最大リスクはピロリ菌 & 除菌後の定期検査も大事!

胃の中は胃酸があり、塩酸と同じくらい強い酸です。これだけ強酸なので、そもそも菌が入ってきたとしても殺菌されるはずです。

それなのに、なぜピロリ菌は胃の中に住むことができるのでしょうか?

実はピロリ菌は、アンモニアをつくり出す酵素をもっているからなのです。アンモニアはアルカリ性です。ピロリ菌は自身の周囲の胃酸を中和するため、胃の中でも生きていけるのです。

ピロリ菌に感染すると、胃粘膜に慢性的に炎症が起こります。この状態は「慢性胃炎」と言われています。慢性胃炎が長期的に続くと胃の粘膜がダメージを受け「萎縮性胃炎」を引き起こし、胃がんリスクが高まります。

では、ピロリ菌を除菌することで、萎縮性胃炎は治る、あるいは胃の粘膜が完全に元に戻るのでしょうか?

答えは「No」です。長い間ダメージを受けた胃粘膜には、がんのリスクが残ります。ピロリ菌の除菌により、胃がんが発生するリスクは低くなるものの、胃がんリスクは決してゼロにはなりません。

帯広に戻り胃カメラ検査をしていて感じるのが「除菌してから胃カメラ検査をしていない」という方が多いことです。ピロリ菌除後にも胃がんが起こり得ることを説明すると、皆さん「知らなかった」と驚きます。

実際に除菌後の胃がんが、当クリニックで見つかっています。

そのため、除菌後も定期的に胃カメラ検査を受けることが大事です。

特に除菌後に発生する早期の胃がんは、非常に見つけにくいという特徴があります。内視鏡検査に習熟した医師のもとで検査を受けることをお勧めします。

50代以上で急に増え始める「腺腫」(せんしゅ)

日本人が罹るもっとも多いがんは「大腸がん」です。

当クリニックでも大腸カメラ検査を希望する方が増えています。この4月に胃カメラと大腸カメラ検査の実績が1万件を超えました。

今回は、大腸カメラ検査について、将来がん化する可能性のあるポリープである「腺腫」の発見率を男女別・年代別で分析します。

大腸カメラ検査実績 4,187件 (2020年8月17日~2024年4月11日)

【腺腫発見率】

1位      男性 60代    89%

2位     男性 70代    80%

3位     女性 70代    72%

4位     男性 50代    63%

5位     女性 60代    59%

男女ともに50代から増え始め、高齢になるほど増加していきます。例えば40代男性の腺腫発見率は45%ですが、50代になると18ポイント上昇します。また男女別では、男性の方が腺腫発見率が高いことです。

大腸カメラ検査の最大の目的は、がん化する前の腺腫を見逃さず、これを切除することです。

大腸がんは、生活習慣、例えば食の欧米化 (赤肉、加工肉)、アルコールの過剰摂取、喫煙、糖尿病や肥満もリスクを高めると言われています。

50代以上の方は、大腸カメラ検査をご検討ください。

内視鏡検査実績が 1万件 を超えました

私たちは、強い思いをもって、2020年8月17日に開院しました。

十勝に開院した背景には、国立がん研究センター中央病院で培ってきた最先端の消化管がんの診断と治療を地元に還元したいという、ずっといだいてきた思いがありました。

私たちのこの “強い思い” とは、

  • 「十勝から消化器がんで亡くなる人を減らす」を “志” に掲げ、
  • これを実現するために「内視鏡で救える命を守る」を “使命” とし、
  • 食道、胃、大腸の検査をとおして、十勝の人たち支える。

開院以来、1万人以上の方に内視鏡検査を受けていただき、その数は10,005件に達しました。1万件超の検査を実現できたことに心から感謝いたします。

【内訳】

内視鏡検査実績:   10,005件

胃カメラ検査      5,465件

大腸カメラ検査     4,540件

期間   2020年2020年8月17日~2024年4月11日

実際にがんが見つかり、治療に結び付いています。

これからも、「志」と「使命」を胸に、地域の皆様を支えるため、高度な技術、診断力、精度にこだわった内視鏡検査をおこなってまいります。皆様のご支援に心から感謝申し上げます。

当院のADR

ADR (大腸における腺腫発見率) については、既にGoogleの最新情報コーナー (内視鏡検査の「精度」2022年2月18日)で取り上げています。ADRの詳しい内容を知りたい方は、こちらをご覧ください。

なぜ、一度取り上げたテーマをまた扱うのでしょうか? それは

 大腸内視鏡検査をどこで受けたらよいか

 内視鏡医師の力量はどうか

このようなことで迷っている方の参考データになると思うからです。

本題に入る前に、「腺腫」という聞きなれない医学用語に戸惑う方も多いはずです。腺腫を一言でいうと、大腸がんになる可能性をもったポリープのことであり、基本的には切除が望まれる病変のことです。

従って、大腸がんに育つ前の「腺腫」を発見し、これを治療することは、究極の大腸がん予防といえます。例えば、

  1. 「ADRが1%上がると、その後の大腸がんのリスクが3%減る」と報告されています (New England Journal of Medicine, 2014年4月)
  2. アメリカ消化器内視鏡学会のガイドラインでは、検査医にADR25%以上を求めています。

迷っている方は是非、ADRを参考にしてみてはいかがでしょうか。

では、当クリニックのADRはどうでしょうか。グラフをご覧ください。

  1. 期間:2021年1月~12月
  2. 大腸内視鏡検査実績:1,081件 (内視鏡総検査実績は 2,291件)
  3. ADR:51.0% (腺腫を発見し治療した数は 551件)
  4. 年代別ADR:40代 9%、50代 57.7%、60代 60.3%  (40代~60代の方の大腸内視鏡検査数は 781件)
  5. 結論:年齢が高くなるほど、腺腫も大腸がんリスクも高い

忙しいビジネスパーソンのために、土曜日 (第1週と第3週) も内視鏡検査を受けることができます。

40歳を過ぎたら一度、大腸内視鏡検査を受けてみてはいかがでしょうか。

十勝の人たちとともに

素晴らしいクリニックを建築していただいた、仲間 (失礼かもしれませんが) たちです。4月15日に初回の現場定例会がはじまり、これまでの建築状況と引渡しに向けてマイルストーンをつくりつつ、定例会で進捗を確認して行きました。

みんなの力が結集したおかげで、私たちの想像を超える清潔かつ機能的なクリニックに仕上がり、8月17日の開院となりました。

8月8日、一般の方々を対象にしたクリニックのお披露目である内覧会をおこなったのですが、来場者数が120人を超え十勝の方々の関心を直接に感じたことを覚えています。開院後、実働日で35日が過ぎましたが、内視鏡検査数も相当数となっています。

クリニックのミッションは、このお知らせコーナーの「クリニック情報 開院のお知らせ」で書きましたが今、あらためて十勝の方々にクリニックが生かされていると実感しています。

クリニックの夢は、十勝管内で5年後 (あるいは10年後かもしれません) の胃がん、大腸がんのみならず消化器がんの統計をとったら、検査数が増え、死亡率が減少していることです。もちろん一介のクリニックごときが頑張ったところで、このデータに影響を与えられないかもしれません。

それでも構いません。わたしたちはこれを実現するために、常に「情熱」を持ち続け、また何事にも「挑戦」する気持ちで、診察と検査をおこなって参ります。

どうぞ安心してご来院ください。